松本の街と芸能

かつての松本は芸どころでした。裏町、天神、そして浅間温泉。三味線や舞踊、唄にお囃子、自慢の腕を競い合う芸者さんがたくさん居ました。芸を教える師匠も教室もそこかしこにあり、上手い人も下手な人もそれは熱心に稽古をしていました。
想像してみてください。裏町で長唄の稽古をした芸者さんがお座敷までの短い自由時間に下馬出町の塩川であんみつを食べながらおしゃべりしたり、縄手横丁の細い路地から清元の語りが聴こえてきたり、普段はさえないおじさんが宴会になると嬉々として舞踊を披露したり。もっと昔は義太夫を唸ったりしていたそうです。何とも楽しそうではありませんか。
でもそれも昔のこと。
私にそれを語ってくれた師匠、芸者さんたちも、ひとり、ふたりと旅立ってしまいました。寂しさとともに危機感に近い感覚を感じていました。もったいないなぁ、と思うのです。ずっとそう思いながら何もせず時が過ぎてゆきました。
そこにやってきたのが新型ウイルス。私も多くの人と同じように引きこもり、考えました。これが長く続いたとしたら、今、松本に残っている教室も遠くに引き上げてしまうかもしれない。芸能の良さを知る人間として、それはあまりに悲しい想像でした。何かできることがあるのではないかと考え、出した答えがこのイベントでした。
各教室の先生方にご協力いただき、素人ながら奮闘して何とか第一回「春の御庭と春の路」を開催することができました。
そして今年、たくさんの人のご協力を得て第二回「松本ジャポニスム」を開催いたします。「工芸の五月」の皆さまにお手伝いいただいたことで、伝統工芸もより充実したものになります。「にっぽん」の良さ、楽しさを見つけていただければ、これほど嬉しいことはありません。
「松本ジャポニスム」、間もなく開催です。4月17日、お見逃しなき様、重ねて御願い申し上げます。


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